ただ、農作物の現状を見ると面白がってはいられません。
2,019年の国連の調査によると、この100年の間に作物在来種の75%が消滅し、家畜も30%が危機的状態だそうです。
その結果、私たちが摂取する栄養の75%をわずか12種類の植物と5種類の動物から得るという、非常に単純化された食体系になって
います。
別の見方をすると、世界で増え続ける人口が多様な気候風土の中でわずかな種類の動植物を奪い合う未来が見えてきます。
本来、その土地に応じた植物をその実りの季節に食べることで、生活や文化が支えられてきたはずなのですが・・・。
遺伝子操作で新しい動植物を作るってのは問題外ですが、次世代に繋げるための種をどうやって守り、育てていくのかは喫緊の課題です。
愛知県では生物多様性への意識を高めていくため、『知産知消』をキーワードにまずは知ってる人が生産し、知ってる人が食べる関係を作ることからお互い様の地域交流経済を推進していこうとしています。
そして自分でも作ってみて、やがては地域に残し続けられる種を守ろうとする活動です。
さて、季節は春。
目覚めの季節です。
冬眠から目覚めた熊は、まず最初にふきのとうを食べて冬の体をリセットするそうです。
春野菜には、冬の寒さを耐えぬいて成長してきたからこそ、すぐれた栄養成分がたくさん詰まっています。
環境破壊で厳しくなった冬の自然でじっと耐え抜いてきた野菜には「ビタミン」「ミネラル」「ファイトケミカル」などの生命力の源を蓄えています。
温室育ちとはわけが違うんです。
肥沃な土1gの中には数十億の微生物が生息しているそうです。
それら微生物は地球の食物連鎖の根幹をなし、植物とはその根と菌糸を通して生命ネットワークを作っています。
まさに自然界の大スペクタクルです。
「生命力の高い旬の野菜を食べること」の意義がそこにあります。
春野菜の苦み成分の植物性アルカロイドは新陳代謝を促進し、春の香りのテルペン類は血行促進、抗酸化作用、ストレス緩和効果もあります。